子どもが自転車で交通事故を起こして相手を怪我させてしまった場合、どうなるでしょうか?
1 交通事故加害者の法的責任
自転車運転者が故意または過失によって他人を怪我させた場合、不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)が発生します。
その結果、被害者に対して、治療費や慰謝料などを支払わなければなりません。
自転車を運転していたのが子どもであっても、原則として損害賠償責任を負います。
2 子どもが交通事故加害者の場合
もっとも、子どもが小学生低学年などで責任能力がない場合には、損害賠償責任を負いません。
法律上、責任無能力者は不法行為に基づく損害賠償責任を負わないとされており(民法712条)、おおよそ12歳前後が責任能力の分水嶺とされているように思われます。
⑴ 子どもに責任能力がない場合
子どもが責任無能力者であることを理由に損害賠償責任を負わない場合でも、その子どもの親権者その他の監督義務者(後見人、児童福祉施設の長、幼稚園主など、以下「親権者ら」といいます)は、次の場合を除き、損害賠償責任を負うことになるので(民法714条1項、2項)、注意しなければなりません。
- ①監督義務を怠らなかったとき
- ②監督義務を怠らなくても損害が生ずべきであったとき
⑵ 子どもに責任能力がある場合
反対に、子どもに責任能力が認められ、子ども自身が損害賠償責任を負う場合には、その子どもの親権者その他の監督義務者がただちに損害賠償責任を負うことにはなりません。
子どもが高速度で自転車を運転する危険を親が知りながら放任していた、過去にも事故歴があった、日常的に問題行動が見られたなどの事情から、監督義務違反と相手の怪我との間に相当因果関係が認められた場合に、親権者その他の監督義務者も損害賠償責任を負うと考えられています。
このように、損害賠償責任を負う主体は、事案によって、親権者らのみであったり、子どものみであったり、親権者らと子どもの両方であったりします。
3 交通事故の解決に向けて
損害賠償責任を負う場合、被害者に対して賠償金を支払う必要がありますが、賠償額の確定にあたっては、適正かつ相当な金額か確認する必要があります。
治療費であれば、診断書や診療報酬明細書等から、被害者の受けた治療が必要かつ相当なものか精査し、不必要に長期の治療であったり、過大な治療であったりすれば、被害者との間で、適正かつ相当な金額に向けた交渉を行います。
休業損害、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益など治療費以外の費目でも同様のことがいえます。
当事者間で合意に至ればよいですが、合意に至らず、調停や裁判など第三者が介在した形で解決を目指すこともあります。
このように、子どもが自転車で交通事故を起こして相手を怪我させてしまった場合、誰が損害賠償責任を負うのか、適正かつ相当な賠償額はいくらかなどの問題が生じます。
これらの問題に適切に対応しなければ大きな不利益を被ることもあります。
そのため、実際に、子どもが自転車で交通事故を起こして相手を怪我させてしまった場合には、お早めに、交通事故に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめします。
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